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市民と医師が語り合う地域医療-在宅医療と小児医療

-地域医療を支えるために必要なこと

2011/05/07

5月1日(日)、アミュゼ柏にて「市民と医師が語り合う地域医療-在宅医療と小児医療について-」が開催されました。
 
5人に1人が65歳以上という超高齢社会が到来した現在、地域医療のあり方については全国的に大きな問題となっています。
 
今回は、地域医療のうち、「在宅医療」と「小児医療」を取り上げ、柏市の医療の現状と課題について、市民と医師会との意見交換が行われました。

◆「長崎在宅ドクターネット」について

まず、秋山浩保市長と柏市医師会の金江清会長の挨拶に続き、2003年に長崎市で発足した「長崎在宅ドクターネット」の取り組みを紹介するDVDが上映されました。
「長崎在宅ドクターネット」とは、複数の医師が連携して、在宅訪問診療や往診を行うシステムのことです。
 
患者1名に対して、連携医(主治医・副主治医)の2名が担当し、主治医が不在で対応できない緊急時の往診などを副主治医が代行するというように、24時間365日の対応を可能にしています。
 
また、「協力医」として、形成外科、眼科、婦人科、麻酔科などの専門医も数多く登録しており、患者の状態に応じて、連携医をサポートすることもできます。
 
いわば「バーチャル医局」として、医師たちがメールなどで頻繁に情報交換を行いそれぞれの専門知識を共有するなど、スキルアップの場にもなっているそうです。
 
一方、柏では、市内の病院同士の連携もまだ十分とは言えず、今後、どのように連携していくかが課題となっているとのこと。

柏には、柏市立柏病院・慈恵医大附属柏病院・国立がん研究センター東病院・千葉大学環境健康フィールド科学センターなど、様々な医療資源があります。
柏ならではの医療資源を、より有効に活かす方法もあるのではないかとDVDを見ながら思いました。

◆柏市医師会の取り組み-在宅医療について

柏市医師会の金江会長
柏市医師会の金江会長
DVDの上映後、医師会の金江会長は「柏は医師数・看護師数・病院のベッド数ともに全国平均を下回っています」と、柏市の医療の厳しい状況について語り始めました。
当日配布された資料によると、柏市の高齢化率は急速に進み、2030年には、全国平均の「31.8%」を上回る「32.4%」になると推計されています。
 
そして、高齢者の急激な増加に対して、市内の病院ベッド数は少なく、結果として、在宅医療を受ける人たちが急増します。
 
しかし、柏市では在宅医療に携わる診療所や医師の数がまだまだ少ないのが現状です。
そのため、柏市医師会では、今まで以上に医療・介護・看護の連携を強めることを目指しているそうです。
 
具体的には、次の項目を検討しているとのこと。
 ● 医療に関する相談・勉強、看護・介護の相談・勉強ができる施設をつくる
 
 ● 在宅医療を行う診療所を増やす
 
 ● 患者1名を医師2名が担当し、相互に協力して在宅医療を提供する
 
 ● 在宅で看護サービスや介護サービスを受けることを容易にするため、事業所を誘致する
 
 ● 患者が在宅での医療を希望して退院する場合、
   「在宅での医療を担当する医師2名」「看護と介護のサービス」をセットで紹介する
在宅医療と一口に言っても、老老介護・シングル介護も含めて、様々なケースがあるので、それぞれの家庭の事情を考慮しつつ、患者と家族を総合的に支える在宅医療の仕組みづくりが早急に必要になります。

◆豊四季台団地の再生計画について

また、今回の会合では、2009年から始まった豊四季台団地における地域再生計画についても紹介されました。

老朽化した豊四季台団地の建て替えにあわせて、柏市・東京大学・都市再生機構(UR)が共同で、超高齢化社会における新たなまちづくりプロジェクトを行っています。
 
豊四季台団地は1964年に入居が開始してから約50年が経過し、現在、高齢化率は40%近くと言われています。
一人暮らしの高齢者も多く、近い将来の日本の姿を先駆けて示しています。
 
そこで、団地と近隣地域を中心に、住民が最期まで安心して暮らせるまちづくりを目標として、多世代が交流できる「コミュニティー食堂」を設置したり、就労などの生きがいの場を創出したり、在宅医療を受けられるようにするなど、地域再生モデルとなるべく、様々な取り組みが行われています。
 
しかし、プロジェクトはまだ始まったばかり。
医療・看護・介護の連携の他、買い物などの生活支援も必要になるので、多職種の人々の参入を計画するなど、まだ模索している段階のようです。

◆柏市の小児医療について

続いて、小児医療についても厳しい状況が説明されました。
柏市内の小児科に関わる医師数は、病院・診療所とも全国平均以下で、小児医療の将来が懸念されます。
 
そこで、今後、安定した小児医療体制を作るために、「診療所と診療所/診療所と病院/病院と病院」同士の“顔の見える連携”が必要だと医師会は考えています。
「かしわこそだてハンドブック」は、WEB上でも見ることができます。<br>http://kosodate.city.kashiwa.lg.jp/crs-info/crs-index.htm
「かしわこそだてハンドブック」は、WEB上でも見ることができます。
http://kosodate.city.kashiwa.lg.jp/crs-info/crs-index.htm
医師会からは、市民に対して『かしわこそだてハンドブック』(ウェルネス柏、市役所児童育成課・母子保健コーナーなどで配布)を活用したり、病院を受診するかどうかの目安を提示する「こどもの救急HP」で調べるなど、子育てや医療についての情報を積極的に調べて欲しいという要望が出ました。
 
また、子どもの「かかりつけ医」を見つけて、普段から健康状態を把握してもらうのも重要とのこと。
一方、市民からは「時間が無かったり、パソコンが無い家庭も多く、能動的に情報を取りにいけない場合もある。
市内の小児医療についても、メール配信など携帯電話で随時情報を見ることができれば、お母さんたちも助かる」という意見も出ました。

この意見交換から、発信者・受信者にとって効率の良い情報ネットワーク構築の必要性を強く感じました。

◆地域医療を支えるために必要なこと

今回の医師会と市民による意見交換会は初めての試みでしたが、柏の医療の現状と課題が少しずつ浮き彫りになったような気がします。

医師会の話の中で、何度か“顔の見える連携”という言葉が出ましたが、地域医療を支えるには、医療者・行政・市民が連携して、新しい医療の形を創り上げる必要があるのかもしれません。
 
『地域医療連携-生き残るための戦略と戦術』(田城孝雄 編著/SCICUS/2009年4月)には、
前述の長崎在宅ドクターネットの他にも、様々な地域医療連携の事例が記載されています。
 
例えば、多職種協働支援チームで在宅医療を担う「広島県尾道市医師会方式(尾道モデル)」や、「神奈川県横須賀市医師会地域医療連携体制協議会」など、地域ニーズに即した様々なネットワークがあります。

また、兵庫県丹波市の「県立柏原病院の小児科を守る会」(※)のように、市民の立場から小児医療の崩壊を阻止した活動も紹介されています。
 
柏においても、医療者・行政・市民が、それぞれの立場で出来ることを考えつつ、お互いに垣根を越えて「地域医療を支えるにはどうしたら良いか」を考える時期が来たのかもしれません。

今回の会合は、その道筋の第一歩のように感じました。
 
「今後も地域医療について、このような意見交換の機会を作りたいと思っています。
東日本大震災の医療支援で被災地に行った経験も踏まえて、災害医療などについても取り上げるつもりです」と語るのは、柏市医師会副会長の長瀬慈村医師。
 
磐石な地域医療の形を創り上げるのは容易なことではないでしょう。
しかし、今後、意見交換を重ねる中で、具体的な方針が固められていくことを期待したいと思います。

「県立柏原病院の小児科を守る会」
2007年、兵庫県丹波市の県立柏原病院の小児科医師が減っていき、ついには小児科がなくなるかもしれないという深刻な事態を受けて、その地域の保護者たちが小児科を守る活動を始めました。
軽症でも夜間外来を安易に利用する「コンビニ受診」を減らすため、子どもの病気の知識と対処法について学び合ったり、「かかりつけ医」を持つように啓蒙するなど、小児科の負担を軽減し、結果的に小児科の存続を実現しました。

プロフィール:柏木じゅん子

柏に15年以上在住しているライターです。
今まで、柏市内の商店街や市役所関連の記事を書く中で、柏の素敵なお店や人たちに出会ってきました。
「まいぷれ柏」でも、柏の魅力をお伝えしていきたいと思います。