ワンコイン♪ちょこっと手土産
レオニダスのチョコレートから意気投合し、ボクには茶飲み友達ならぬ“コーヒー飲み友達”ができた。
一緒にコーヒーを飲むだけとはいえ、女の子と二人で過ごす時間は楽しい。今日もこれから来るというので、ボクは昨日デパ地下でちょっとお高いケーキを買っておいた。
「こんにちは! 今日はお煎餅持ってきました!」
あ…ボクもケーキ買ってあるんだ…
「じゃあ、まずケーキを食べて、そのあとでお煎餅を食べましょう」
彼女はボクが用意した“高級ケーキ”を一口で食べおわり、こう言った。
「お茶入れましょう。お煎餅にはやっぱりお茶ですよね!」
そう言うなり、持参してきた煎餅と茶葉とを出しはじめた。なんと急須まで持ってきている。彼女は、日本茶を入れ始めた。
「あっ 茶柱立ってる♪」
茶柱どころか茶葉まで出てきていて、めでたさ目白押しだ。
それより、こだわりの男を目指しているボクにしてはこだわらずに買ってしまった100均の湯のみを使われてしまったことがショック… 彼女はそんなことまったく気にしていなそうだが。
そうさ、ボクはそんなことを気にしてしまう小さいヤツなのさ。
彼女は煎餅の包みを出した。
「先輩のために、おじさんにラッピングしてもらったの」
煎餅屋のおじさん、ラッピングはあまり得意ではないらしいが、味のある包装に愛を感じる。
「谷津せんべいっていうの。昭和感ただようお煎餅屋さんでね、ちょっとぶっきらぼうなおじさんがお店の奥で焼いてて…でもね、話すと優しくて。私、このおじさん好きなんです!」
なるほど、まんまの店名がわかりやすい。しかも見えるところで焼いているというのがとても興味深い。彼女を魅了するおじさんにもちょっと会ってみたい。
手焼きのせんべい屋は今まで成田山や浅草などの参道では見かけたことはあるが、普通に自分の住む町にそんな店があるというのは、ちょっとうらやましく思う。
ケーキの後に、この醤油味の煎餅とお茶が抜群に美味い。
一口大に煎餅を割りながら食べているボクに、煎餅を割らずに丸のままかじりながら少し怒り気味に彼女が言った。
「おせんべいは丸のままかじってください! ほら、こうやって!」
大げさなフリを入れて煎餅をかじった後、「やったぜ」的な表情で斜め上を見つめてポーズをキメている。毎回こんなふうに煎餅を食べるのか… 考えるだけで疲れるが、ある意味尊敬できる。
「あーあ、こたつとテレビがあったら最高なんだけどなー」
と、煎餅を加えたまま天井を見上げながら、彼女がつぶやいた。
そう、うちにはこたつもテレビもないのだ。
「こたつに入ってお茶飲みながら、お煎餅かじって、紅白見たい」
じゃあ、テレビとこたつ買ったら、一緒に年越す?
なんと…ボクはまるっきり自分らしくないことを口走ってしまった。
「せっ、先輩! それって、プロポーズですかっ!!??」
ちがう…そこまで言ってないから。
そして煎餅をたべながら叫んではいけません。吹き出した煎餅の欠片が飛び散ってるじゃないか。
冗談だよ、でも、よかったらまた遊びにおいで。
その後、小さくなった煎餅はお茶に浸してスプーンで食べるとうまいという彼女の提案にNGを出しながらも、また遊びに来るという約束を取り付けて、コーヒーの会ならぬ、茶会はお開きになった。
その夜ボクは、時々足の裏にチクリと刺さる煎餅の小さな欠片に、ちょっとした幸せを感じていた。
手焼きの味が懐かしい 谷津せんべい
谷津駅から山側に出て少し歩いたところにある「谷津せんべい」は、創業40年以上にもなる、お煎餅屋さんです。
店の奥で煎餅を焼いているときは、お客さんに気づいてもらえないことがあるので、大きな声で「こんにちは!」「くださーい!」などと声をかけましょう。
緑に囲まれた異空間。それが谷津せんべいだ!
みんなでワイワイ食べるなら、種類がいろいろ入っている大袋の「割れせん」がオススメ。
バラなら50円のものからあります。
辛いもの好きな人にはこの「唐辛子せん」。
伯父さんいわく「そんなに辛くない」とのことだが…
カライよ…
おじさんが1枚1枚焼いているお煎餅は、昭和の味がする!
谷津せんべい
住所 千葉県習志野市谷津5-5-6
TEL 047-477-7715