柏を探索! まちかどレポーター!
7月10日(日)、ウェルネス柏にて「市民と医師が語り合う地域医療」が行われました。
5月の意見交換会に続き、第2回目の開催となります。今回のテーマは「災害医療」。
東日本大震災から4ヶ月が経過した今、災害時における医療提供・平時の対策・市民の立場からできることついて考えるという内容です。
ウェルネス柏
【第1部 報告会】 東日本大震災における柏市の被害状況/東日本大震災の被災地の医療状況について
まず、第1部では、市役所から「東日本大震災における柏の被害状況」の説明と、
柏市医師会・保健所・消防局・警察・ボランティアの方々から「被災地での医療の状況」についての報告がありました。
柏市は、地震そのものによる被害は甚大ではなかったものの、
福島第一原発関係による放射線対策の必要性に迫られており、
今後は専門家の助言を含めて情報発信していく予定とのことでした。
会場には約30人の参加者が集まり、熱心に耳を傾けていました。
柏市医師会は、3月18日~21日と、4月6日~8日に、
岩手県釜石市において災害支援活動を行いました。
ライフラインが寸断された中で、医療活動が困難を極めた様子が伝わります。
柏市医師会災害支援活動チーム
[写真提供:柏市医師会]
大槌町避難所
[写真提供:柏市医師会]
医療支援の統一性・継続性の観点からも、
現地の災害対策本部や他の医療チームと連携し、
現状把握・活動報告など情報を共有することが重要とのことでした。
鵜住居町
[写真提供:柏市医師会]
箱崎町
[写真提供:柏市医師会]
また、柏市消防局は、緊急消防援助隊千葉県隊の一員として、
岩手県陸前高田市(3月13日~3月22日)・福島県(3月28日~4月5日)に出動しました。
そして、柏市保健所からは、第1班(5月3日~5月7日)と、第2班(5月7日~5月11日)が
宮城県石巻市に派遣され、担当地区の全世帯の訪問健康調査と避難所の健康調査を行いました。
(6月以降も継続して派遣)
災害発生直後・発生から数日後・発生から数ヵ月後と、時間が経過するにつれて、必要な物資・支援は刻々と変化していきます。
そのような現地での支援活動報告を踏まえたうえで、
第2部では、参加者が2班に分かれて、柏市で地震などの大規模災害が発生した場合を想定し、グループディスカッションを行いました。
【第2部 グループディスカッション】
グループディスカッションでは、自己紹介と第1部の報告会の感想を述べたあと、
(1) 柏市が被災した場合の医療提供のあり方
(2) 平時の医療で考えること
(3) 市民の立場からできること
の3つのテーマで語り合いました。
市民・医師・市役所職員が、それぞれの立場から意見を出し合います。
参加者は2班に分かれて、様々な意見を出し合います。
参加者の発言が、次々にまとめられていきます。
1班の意見まとめ
●発災時には、ライフラインも情報も全て寸断されるので平時からの準備が重要。
(水・食料の他、普段服用している薬も1週間~10日分くらいストックしておいた方が良い。また、心臓マッサージなどの応急処置をできるようにしておく)
●災害時に怪我をしたら、救急車は呼ばず、直接病院へ行く。
(救急車は平時でもギリギリの台数なので、災害時に救急車を当てにすることはできない。)
●災害時の情報については、放射線のことなども含めて、情報提供のあり方が課題。
不安やパニックにならないためには、情報を得るだけではなく、「納得」することが重要。
正しく情報を理解したいと思っても、マスコミの情報に左右されてしまいがち。
信頼関係のある身近な人(専門知識のある人)に、
信頼ある情報を提供してもらうことで納得できる。
●発災時には自助・互助・公助=7:2:1の割合。
ともかく自分の命は自分で守る必要がある。
その後、時間の経過とともに、自助・互助・公助の割合も変化する。
●今だからこそ、災害時にどうするか家族の間で話をしておく必要がある。
また、マンション住民同士・隣近所のような、地域コミュニティでの話し合いも必要だが、実際には難しく、それが課題。
2班の意見まとめ
●発災時と平時では、情報の伝達状況が異なる。
スムーズに情報を伝達するには、平時からの人とのつながり・ネットワークづくりが大切。
実際に、年に4,5回程度、社会福祉協議会・自治会・医師たちによる災害時に向けた意見交換を行っているケースもある。
そのようなネットワークが、今後もっと広がると良い。
●行政の内外での連携も重要。行政内では縦割りではなく横のつながりも必要。
行政に出来ること・できないことを明らかにする。行政と市民の相互理解や連携が必要になる。
●防災グッズは必要最低限の物に留めないと重すぎて持ち運べない。
その必要最低限の物についての情報が欲しい。
●このような意見交換の場自体が少なすぎる。
地域内での情報交換も必要だし、もっと広い範囲(柏市全体)から集まって話し合いが出来たら良い。
そうすれば、様々なアイデアが生まれるのではないか。
今回のグループディスカッションは約1時間でしたが、短い時間の中でも上記のような様々な課題が浮き彫りになりました。
もう少し時間があれば、一つ一つの議論を更に展開できたように思います。
第1回目の「市民と医師が語り合う地域医療(在宅医療と小児医療)」では説明と質疑応答のみでしたが、
今回はグループディスカッションが加わり、市民・医療者・行政の距離がより近くなったという印象を受けました。
グループディスカッションは、その場で結論を出すことを目的としているわけではありません。
一方的な情報提供を行うだけではなく、様々なバックグラウンドを持つ人々が、
お互いに「対等な立場」で意見を出し合うことにより、
情報を共有したり、新しいアイデアが生まれたり、相互に理解を深めることにもつながります。
柏市医師会副会長の長瀬慈村医師によると、今後も、このような対話の場を予定しているとのこと。
対話を重ねることで、市民・医療者・行政の新しい連携の形が徐々に見えてくるのではないでしょうか。