柏を探索! まちかどレポーター!
10月22日(土)、ウェルネス柏にて「市民と医師が語り合う地域医療―障害者医療について考えよう」が行われました。
第1回(在宅医療と小児医療)、
第2回(災害医療)に続き、第3回目の開催となります。
まず、柏市における障害者の現状について、柏市と医師会からの報告の後、
質疑応答と意見交換が2時間にわたって行われました。
65名(市民・医師会の担当者・市役所の担当者)が参加しました。
―柏市における障害者の現状について―
市からの報告(まとめ)
1.障害者数 市内の身体障害者・知的障害者・精神障害者の合計=13,791人
(平成23年9月末時点)
[※1]
※1 障害者数については、参加者から、手帳(=身体障害者手帳、療育手帳、
精神保健福祉手帳)の所持者のみの人数という指摘あり。
手帳の所持者だけが障害者ではなく、
手帳を交付されていなくても支援が必要な人もいるとのこと。
2.障害者数の推移(平成18年度→平成22年度) ・身体障害者(伸び率16.5%)、知的障害者(伸び率29.4%)、精神障害者(伸び率77.4%)
・精神障害者急増の背景には、精神障害について周知されてきたことや
ストレスの多い社会環境などが考えられる。
・高齢化に伴い、障害の重複化・重症化も懸念される。
3.障害者自立支援法(平成18年施行)について [※2] 【3障害の一元化】…支援制度の対象外だった精神障害を加えた3障害
(身体・知的・精神)の制度格差を解消する。
【昼夜分離】…24時間、同じ施設内で過ごすのではなく、日中活動の場と居住支援の
場を組み合わせて利用できる。それにより、障害者が希望に応じて、
複数のサービスを受けられるようになる。
【地域移行の推進】…施設中心の処遇から、地域生活支援・就労支援など、地域で
暮らすために必要なサービスを受けられるようになる。
※2 詳細は、「
独立行政法人福祉医療機構WAM NET」の
「
障害者自立支援法に基づく新体系のサービスが目指すもの」(PDF)を参照。
4.ノーマライゼーションかしわプラン(障害者基本計画)について 障害者が地域の中で生き生きと暮らせる社会を目指す計画。
詳細は、柏市HP「
ノーマライゼーションかしわプラン」を参照。
5.障害者医療に関して柏市が提供しているサービスについて (1)
自立支援医療費(障害者自立支援法)…更生医療(18歳以上)
育成医療(18歳未満)
精神通院医療
(2)
重度心身障害者医療費の助成(千葉県の補助事業)
(3)
精神障害者入院医療費の助成(市独自)
医師会からの報告(まとめ)
障害者医療へ取り組みについて、医師会の中でアンケート調査を実施した。
(対象:市内の病院・クリニック196施設、回答42件)
(1)施設設備のバリアフリー化の状況について
「段差の解消及び階段併設のスロープの設置」・「スペースの広いトイレ」・「手すりの設置」
を実行している施設は多いが、点字を設置している施設は少ない。
(2)医療体制のバリアフリー化の状況について
「聴覚障害者に筆記で対応」している施設は多いが、
「聴覚障害者に手話で対応」・「障害者への配慮について理解を求めるための院内掲示」
などを行っている施設はほとんどない。
(3)今後の取り組みについて
「疑似体験研修をスタッフに行っている」、「障害者受け入れをなるべく出来るように対応していく」など、
各病院で可能な範囲での対応を行っている。
その一方で、障害者医療への特別な取り組みは、まだ不足しており、
今後も対策を考える必要がある。
―質疑応答・意見交換ー
質疑応答・意見交換の中では、様々な意見が出されました。内容の一部は下記の通りです。
<自立支援医療制度について>
参加者: 来年4月以降、自立支援医療は、市町村民税の所得割の額が
235,000円以上だと、「重度かつ継続」の該当者も、
公費負担対象外になるという連絡が来た。
これは柏市だけなのか?
安定しない状態が長く続く児童も対象外になるのか?
市役所: 柏市だけではなく、全国(厚生労働省)の方針。
また、成人・児童の区分はない。
但し、重度心身障害者の場合、柏市では助成事業があり、
健康保険診療分の最終的な自己負担金が助成されるので、
自立支援医療の対象外になっても、全額公費で負担することが出来る。
<医療体制のバリアフリー化について>
参加者: ・病院側に「障害者受け入れ」の意思表示をしてほしい。
夜間救急受け入れ可能な病院の情報も必要。市からも情報発信して欲しい。
・障害者に優しい医療機関マップがあると良い。
障害の種類・程度・年齢別のマップがあると患者は助かる。
自分たちでヒアリングするので、医師会にも協力して欲しい。
医師会: 色々な障害があるので、どこまで診られるか、範囲を決めるのは難しい。
医師会の中でも、どの医師が、どの程度診ることができるかまでは
把握しきれていない。
重度心身障害者に関しては、設備上、小さなクリニックで診るのは難しい。
柏市では9つの大きな病院があり、その中で、救急医療や在宅医療の対応を
しているが、障害者医療への対応も検討する必要がある。
参加者: 聴覚障害者のために、病院のFAX番号を公開してほしい。
医師会: FAXを公開すると、いたずらなどで業務に支障をきたす。
しかし、聴覚障害者など必要な方には「FAX番号を公表しても良い」
という病院の番号を、医師会を通してお知らせしている。
<発達障害について>
参加者: ・発達障害を早期発見できるような専門施設を設置したり、
専門医に常駐して欲しい。
・発達障害で知的障害を伴わない場合、不登校・引きこもり・自傷・
反社会的な行動など二次障害の問題も出てくる。
発達障害への対応は難しいという意見もあると思うが、
かかりつけ医は、専門医の紹介など、次の段階をどうすればよいか、
検討してほしい。
医師会: 慈恵医大柏病院の小児科に、小児神経外来が週2回ある。
ただ、小児科の先生たちも小児の症状を一通り診ることができるので、
必要なことがあればアドバイスすることは可能。
また、ウェルネス柏には「こども発達センター」が今年4月にオープンした。
医師は常駐していないが、専門知識のある人たちが相談に応じ、
支援してくれる。
市民・医師会・行政の意見のやりとりの中で浮かび上がったのは、
制度の谷間の問題と、医療体制のバリアフリー化の課題です。
平成18年に施行された「障害者自立支援法」は、
すべての障害者を対象にすることや、サービスの全国一律化を目指した制度です。
しかし、実際には、支援を必要とする人が対象外になったり、
利用者の自己負担が増大するなど、制度の谷間で多くの問題が発生しているのが、
参加者の意見から伝わりました。
現在、制度の谷間をなくす新たな「障害者総合福祉法(仮称)」の法案提出
(平成24年度予定)の準備が進められていますが、
障害者をどのように支援していくか、財源をどのように確保するかなど、
課題は山積みです。
また、医療体制のバリアフリー化については、障害のある方・保護者たちから、
「病院の障害者受け入れの説明表示」を求める声が多かったのが印象に残りました。
今回のテーマは「障害者医療」でしたが、障害と言っても、種類・程度・年齢・性別など、
それぞれ状況は異なり、総括して語ることの難しさを感じました。
前回の意見交換会(災害医療)の時のように、グループディスカッションを行うと、
個々の状況・課題・改善点などが、もう少し浮き彫りになるのではないかと思います。
しかし、今回は、障害者医療の厳しい現状の一端を知る貴重な機会でもありました。
障害者医療については、まず、障害を他人事としてではなく、
自分や家族の身にも起こりうることとして考えることが大事なのかもしれません。
その上で、市民・医療者・行政が直接対話して、情報を共有し、
共に課題解決を目指す必要があるのではないでしょうか。